ttp://www.shinmai.co.jp/news/20060502/mm060502sha4022.htm
より
【「氷の土石流」一気に 山スキーでまた犠牲】

1日、5人が巻き込まれ、3人が死亡する雪崩が起きた北アルプス針ノ木岳の針ノ木雪渓は、
北アの白馬、涸沢と並び「日本三大雪渓」として知られる。山スキールートとしても人気だが、
今年は残雪が例年より多いうえに、この日は大町市で7月上旬並みの23・3度まで気温が
上がるなど、雪崩が起きやすい条件がそろっていた。

巻き込まれた伊藤幸雄さん(53)ら4人は、「安全で楽しい登山」を掲げる登山家岩崎元郎さ
ん(61)=東京=が主宰する登山学校「無名山塾」の卒業生。計画書によると、1日午前7時
に登山口の扇沢に集合、雪渓を上り、山スキーで滑降する日帰りの日程だった。

同じ卒業生で下山連絡先だった金沢和則さん(52)=東京=によると、4人は数年前から、
雪がある時期はほぼ週末ごとに山スキーに出掛けていた。今回も「塾」の技術委員会に3月
中に計画を打診し、4月10日に計画書を提出。委員会も4人の経験から「問題ない」としていた。

ただ、29、30日に北ア唐松岳に登った岩崎さんは「今年は雪が多いので、雪崩にはくれぐれ
も注意するよう繰り返し言っていた」と話す。

長野地方気象台などによると、1日午前は北海道付近の低気圧に向かって南から暖気が流入
した。同日午前9時の天気図では、雪渓下部とほぼ同高度の上空1、500メートルの気温は
10度と平年より高めで、風速は約20メートル。同気象台は「暖気が融雪を進めた可能性があ
る」とみる。

救助に当たった大町署員の小倉昌明警部補(45)は「気温上昇と残雪を考えれば、当然警戒
すべきだ。注意深い人なら行かなかったかも」。上空から周囲を見た県警航空隊の操縦士、
高山徳恵警部(48)は「沢という沢に雪崩の跡がある」と話した。

県警によると、現場の積雪は7、8メートル。今年は違う状態の雪の層が重なっており、雪崩が
起きやすいという。今年に入って4月末までに県内で起きた山岳遭難は26件。昨年は1年間
で1件しかなかった雪崩事故が6件発生し、4人が死亡、1人が行方不明、8人がけがをしている。